「この仕事は〇〇さんしか分からない」
「担当者が休むと業務が止まってしまう」
「社長や一部の管理職に確認しないと、何も決められない」
このような状態が続いている場合、業務が属人化している可能性があります。
属人化を解消しようとして、まずマニュアルを作成したり、ITツールを導入したりする企業も少なくありません。
しかし、マニュアルやツールを用意するだけでは、属人化が解消されないケースがあります。
なぜなら、属人化の原因は情報共有の不足だけでなく、人員配置、役割分担、責任者、判断権限、業務フローなど、組織全体の設計に隠れている場合があるからです。
属人化を解消するには、まず「誰に・どの業務・どの判断が集中しているのか」を把握し、原因に合わせて仕組みを整える必要があります。
また、すべての専門業務を誰でもできる状態にする必要はありません。
| 目指すべきなのは「属人化ゼロ」ではなく、担当者が不在・異動・退職しても業務が止まらず、必要な情報・判断基準・ノウハウが組織に残る状態です。 |
この記事では、属人化の意味や原因から、具体的な解消方法、失敗しやすいポイント、AI・DXの活用方法まで解説します。
Brand Hatchが実際に行った組織改善の事例も紹介するため、自社の属人化に悩んでいる経営者や管理職の方は参考にしてください。

1. 属人化とは?特定の人がいないと業務が回らない状態

属人化とは、業務の手順・進捗・判断基準・ノウハウなどが特定の担当者に集中し、その人がいなければ業務を進めにくい状態です。
「〇〇さんに聞かないと分からない」「担当者が休んでいるから回答できない」といった状況が頻発している場合は、属人化を疑ったほうがよいでしょう。
ただし、専門性の高い社員がいること自体が問題なのではありません。
問題なのは、その人の知識や経験が組織に共有されず、代替や引き継ぎができないことです。
1-1. 属人化の意味
属人化した業務では、担当者本人の記憶や経験に仕事が依存しています。
たとえば営業担当者だけが顧客との過去のやり取りを知っており、CRMや議事録に履歴が残っていなければ、別の社員が顧客対応を引き継ぐのは困難です。
経理担当者しか請求処理の方法を知らない場合も、担当者が突然休職・退職すると業務に支障が出ます。
属人化を判断するときは、「今の担当者が明日から1カ月不在になった場合でも、会社として業務を継続できるか」と考えてみると分かりやすいでしょう。
業務が大きく止まってしまうのであれば、改善の必要性があります。
1-2. 属人化しやすい業務の具体例
属人化は、専門業務だけで起きるものではありません。
日常的なバックオフィス業務や営業、経営判断などでも発生します。
| 業務 | 属人化している状態の例 | 最初に見直すポイント |
|---|---|---|
| 営業 | 顧客情報・商談履歴・提案方法を担当者しか知らない | CRMなどに顧客情報・商談履歴を集約し、提案や引き継ぎの基準を共有する |
| 経理 | 特定社員しか請求・入金処理ができない | 締め日・処理手順・例外対応・承認基準を文書化し、副担当者を決める |
| 採用 | 応募者対応や面接判断を1人に依存している | 選考基準・面接評価項目・応募者対応履歴を共有し、複数人で確認できる状態にする |
| 顧客対応 | クレーム対応の判断基準が担当者の経験頼みになっている | 回答基準・エスカレーション条件・過去の対応履歴を共有する |
| Excel・集計 | 作成者しか数式やマクロの仕組みを理解していない | 数式・マクロ・更新手順・元データの場所を文書化し、別担当者でも更新できる状態にする |
| システム管理 | ID・設定方法・操作方法を1人しか把握していない | 管理権限・ID・設定手順・緊急時対応を複数人で管理する |
| 経営判断 | 社長の承認がなければ細かな業務まで進まない | 現場で判断できる範囲と、社長・管理職へ確認する条件を明確にする |
特に中小企業では、一人の社員が複数業務を兼任しているケースがあります。
本人の対応力が高いほど仕事が集まりやすく、「あの人に頼めば早い」という状態が続くことで属人化が進んでしまうこともあります。
1-3. 属人化と標準化・仕組み化の違い
属人化を解消するときに目指すのが、業務の標準化・仕組み化です。違いを整理すると、次のようになります。
| 状態 | 属人化 | 標準化・仕組み化 |
|---|---|---|
| 業務知識 | 特定の人に集中 | 組織で共有 |
| 手順 | 個人の経験・記憶に依存 | 手順・ルールが明確 |
| 担当者不在時 | 業務が止まりやすい | 他の社員が対応しやすい |
| 判断基準 | 担当者の感覚に依存 | 一定の基準が共有されている |
| 品質 | 担当者によって変わる | 一定品質を保ちやすい |
仕組み化とは、単にマニュアルを作ることではありません。
「誰が担当しても一定水準で進められる」「判断に迷ったときの基準が分かる」「問題が起きたときの報告先が明確」といった状態まで整えることが重要です。
1-4. 属人化を完全になくす必要はない
属人化を解消すると聞くと、「すべての仕事を誰でもできるようにする」と考える方もいるかもしれません。
しかし、高度な営業力や専門知識、長年の経験が必要な仕事まで完全に均一化する必要はありません。
優秀な専門家を育てることと、危険な属人化を解消することは両立できます。
重要なのは、「その人が得意だから担当している」ことと、「その人がいなければ誰も何も分からない」状態を区別することです。
専門担当者が休んだとしても、顧客情報や進捗、基本手順、判断基準などを別の社員が確認できるのであれば、組織としてのリスクは大きく下げられます。
| 属人化解消のゴールは、すべての専門性をなくすことではなく、共有・代替・引き継ぎができる状態をつくることです。 |
2. 属人化を解消する8つのステップ

属人化を解消するには、マニュアルを作る前に現状と原因を把握することが重要です。
基本的には、次の8ステップで進めます。
- 属人化解消の目標を決める
- 担当者へのヒアリングと現場確認を行う
- 業務を棚卸しして見える化する
- 解消すべき業務に優先順位を付ける
- 人員配置・責任者・役割分担を見直す
- 業務フロー・ルール・マニュアルを整備する
- 情報共有・引き継ぎ・教育を行う
- 必要に応じてAI・DXを導入し、改善を続ける
属人化は、一度マニュアルを作っただけで解消するものではありません。
実際に別の社員が対応できるかを確認し、運用後も改善を続ける必要があります。
| 図:Brand Hatch式 属人化解消8ステップ | |||
| 1. 人・現場確認 → | 2. 業務の見える化 → | 3. 優先順位 → | 4. 役割・配置 |
| ↓ | |||
| 8. 改善・定着 | ← 7. AI・DX | ← 6. 共有・教育 | ← 5. 標準化 |
| 流れは「人・現場確認 → 業務の見える化 → 優先順位 → 役割・配置 → 標準化 → 共有・教育 → AI・DX → 改善・定着」です。 | |||
| ポイント:制度やツールを先に当てはめるのではなく、その会社の人・役割・業務に合う仕組みを設計します。 | |||
2-1. ①属人化解消の目標を決める
最初に「どのような状態になれば属人化を解消できたと判断するか」を決めます。
「属人化をなくす」という抽象的な目標だけでは、施策を実施しても成果を判断できないためです。
- 担当者が休んでも業務が止まらない
- 他の社員が必要な情報を確認できる
- 基本的な判断基準が共有されている
- 副担当者へ引き継げる
- 社長や特定管理職への確認回数が減る
重要業務であれば、「担当者以外に最低1人は対応できる状態にする」といった具体的な目標を設定してもよいでしょう。
ゴールを決めることで、どの業務から改善すべきかも判断しやすくなります。
2-2. ②担当者へのヒアリングと現場確認を行う
Brand Hatchでは、組織改善を行う際に、制度やツールより先に「人」と「現場」を確認します。
業務が属人化していると、「担当者が情報を共有しないから悪い」と考えてしまうことがあります。
しかし、実際には本人の問題ではなく、業務量が多すぎる、仕事の範囲が広すぎる、責任者が機能していない、周囲に任せられる人がいない、社長から担当者へ直接仕事が集中している、得意だから頼られ続けている、といった組織側の原因が隠れていることもあります。
担当者には、次のような内容を確認しましょう。
- 何に時間がかかっているか
- 本人しか判断できないことは何か
- 他の人が対応できない理由は何か
- どこで仕事が滞りやすいか
- 誰との連携が必要か
- 本人が負担に感じている業務は何か
- 得意・不得意と実際の担当業務が合っているか
ヒアリング内容だけを鵜呑みにせず、実際の仕事の流れも確認することがポイントです。
| 誰が悪いかではなく、「なぜその人に仕事が集中しているのか」を見ることが、属人化解消の第一歩です。 |
2-3. ③業務を棚卸しして見える化する
次に、属人化している可能性がある業務を一覧化します。最低限、「誰が・何を・いつ・どのような手順で・どのツールを使って・誰と連携して・どこで判断しているのか」を整理してください。
業務名だけでなく、「判断が必要になるポイント」を可視化することも重要です。
たとえば請求書発行の操作手順は誰でも分かっていても、「この取引先だけ締め日が違う」「このケースだけ社長確認が必要」といった例外処理を担当者しか知らない場合があります。
属人化しやすいのは、このようなマニュアルに残っていない判断部分です。
2-4. ④解消すべき業務に優先順位を付ける
棚卸しした業務をすべて同時に改善しようとすると、現場の負担が増えて途中で止まりやすくなります。
そのため、重要度が高い業務から進めます。
優先順位を決める際は、次の観点が参考になります。
- 担当者が不在になったときの影響
- 売上・利益・顧客への影響
- 現場業務への影響
- 社長や担当者にかかっている負担
- 他の業務への影響
- 改善に必要な工数
- 改善した場合の効果
たとえば担当者が休んだだけで請求業務が停止するのであれば、優先度は高いでしょう。
一方、年に一度しか行わず、停止しても経営への影響が小さい業務は後回しでも構いません。
「全部改善する」ではなく、「会社にとって止まると困る業務から改善する」と考えることが重要です。
2-5. ⑤人員配置・責任者・役割分担を見直す
マニュアル不足だと思っていた属人化が、実は人員配置や役割分担によって発生しているケースがあります。
- 優秀な社員に仕事が集まり続けている
- 責任者が判断せず、一部社員が実質的な責任者になっている
- 本人の得意分野と担当業務が合っていない
- 社長しか判断できない仕組みになっている
- 誰が責任者なのか曖昧
この場合、マニュアルを増やしても根本的な問題は解決しません。
必要に応じて、配置変更、責任者変更、副担当者の設定、権限移譲、業務分担の変更まで検討します。
属人化を解消するときは、「仕事をどう標準化するか」だけではなく、「そもそも誰が担当するのが適切なのか」まで考える必要があります。
2-6. ⑥業務フロー・ルール・マニュアルを整備する
業務と役割を整理したら、誰が見ても分かる形に残します。
ただし、操作手順だけをまとめたマニュアルでは不十分です。
可能であれば、次の内容まで整理しましょう。
- 業務の目的
- 担当者・副担当者
- 作業手順
- 判断基準
- 使用するツール
- 注意事項
- 例外時の対応
- 報告が必要な条件
- 報告先
- 関連資料の保存場所
特に「判断基準」と「例外時の対応」が重要です。
通常業務だけをマニュアル化しても、イレギュラーが発生するたびに元担当者へ確認していれば属人化は残ったままです。
「この場合は誰が判断するか」まで決めておきましょう。
2-7. ⑦情報共有・引き継ぎ・教育で複数人が対応できる状態にする
マニュアルを作成したら、実際に別の人が対応できるか確認します。
ここを飛ばすと、「マニュアルはあるけれど誰も使えない」という状態になりかねません。
- 副担当者を決める
- OJTで業務を経験してもらう
- 元担当者がいない状態で実際に作業する
- 判断できなかった箇所を記録する
- マニュアルに不足している情報を追加する
可能であれば、一時的に担当者が業務から離れ、別の社員だけで対応できるか試してみる方法も有効です。
そこで止まった部分こそ、まだ属人化が残っている部分です。
| 属人化解消の成果は、マニュアルを作ったかではなく、担当者以外でも実際に業務を進められるかで判断しましょう。 |
2-8. ⑧必要に応じてAI・DXを導入し、継続的に改善する
業務を整理したあとであれば、AIやITツールによる効率化も進めやすくなります。
一方、業務フローが整理されていない状態でツールを導入すると、かえって現場が混乱する場合があります。
Brand Hatchでは、AI・DXについても「導入すること」自体をゴールにしていません。
重要なのは、現場で継続的に使われ、実際の業務が改善されることです。
導入後は、実際に社員が使っているか、作業時間は減ったか、担当者以外でも対応できるようになったか、ミスは減ったか、マニュアルは最新か、業務が止まる場面は減ったかを確認しましょう。
属人化解消は一度で終了する取り組みではありません。
人員変更や業務変更に合わせて、仕組みも更新していく必要があります。
3. 業務が属人化する6つの原因

属人化を解消するには、「何をするか」だけでなく「なぜ起きたのか」を理解する必要があります。
原因を間違えると、対策を行っても同じ状態に戻ってしまうためです。
3-1. 特定の担当者に業務や判断が集中している
「仕事ができる人に頼んだほうが早い」という状態が続くと、その社員へ業務が集中します。
最初は効率的に見えても、長期的にはリスクになります。
本人しか顧客情報や判断基準を知らなくなれば、休職・異動・退職時に業務が止まりかねません。
社長についても同様で、細かな判断まですべて社長に集中している場合、「社長の属人化」が起きていると考えられます。
3-2. 業務の専門性が高く、暗黙知になっている
経験を重ねた担当者ほど、「なんとなく分かる」「過去の経験から判断できる」という暗黙知を持っています。
この知識は本人にとって当たり前なので、言葉や資料として残されにくいのが特徴です。
属人化解消では、単なる操作手順だけでなく、「何を見て判断しているのか」「どの条件なら上司へ相談するのか」といった判断プロセスまで言語化する必要があります。
3-3. 多忙で情報共有や引き継ぎをする時間がない
現場が忙しい会社では、情報共有やマニュアル作成が後回しになりがちです。
「今は忙しいから落ち着いてから整理しよう」と先送りしているうちに、さらに業務が集中します。
その結果、担当者が忙しいから共有できない、共有できないからさらに担当者へ仕事が集まる、という悪循環が生まれます。
属人化を本気で解消するなら、業務改善のための時間を会社として確保することも必要です。
3-4. マニュアルや情報共有の仕組みが整っていない
顧客情報が個人のメールボックスにしかない、資料が個人PCへ保存されている、最新ファイルの場所が分からない、といった状態も属人化の原因です。
情報が存在していても、必要な人がすぐに確認できなければ共有されているとはいえません。
「どこに保存するか」「誰が更新するか」「最新版はどれか」までルール化しましょう。
3-5. 人員配置・責任者・役割分担が合っていない
Brand Hatchでは、組織改善で最初から「この制度を導入すれば解決する」と決めつけません。
人の話し方や反応、得意・不得意、責任感、周囲との関係などを確認したうえで、配置や役割が合っているかを見ます。
業務が一人へ集中している場合でも、その社員自身が問題なのではなく、組織設計が合っていないケースがあります。
属人化が強い部署では、業務フローだけでなく、責任者と各メンバーの役割も一度確認してみてください。
3-6. Excelや古いシステムなど個人依存の業務環境になっている
担当者が独自に作成したExcelやマクロが長年使われていると、作成者以外は仕組みを理解できない場合があります。
また、システムの管理権限やパスワードが一人に集中していることもリスクです。
ツール自体が悪いのではありません。
「誰が仕組みを理解しているのか」「担当者がいなくても維持できるのか」という視点で確認しましょう。
4. 属人化が解消できない企業に多い5つの失敗

属人化対策に取り組んでも、思うように改善しない企業があります。
特に注意したいのが、方法そのものを目的にしてしまうことです。
4-1. マニュアルを作っただけで終わっている
属人化対策というと、最初にマニュアル作成を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、作成しただけでは意味がありません。
内容が古い、検索しにくい、例外対応が書かれていない、誰も使っていない、といった状態では業務は変わりません。
マニュアル作成後に、別の社員が実際に使って業務を行えるか確認する必要があります。
4-2. 業務整理をせずにITツールを導入している
高機能なITツールを導入しても、元の業務が整理されていなければ成果につながりにくくなります。
不要な業務をそのままデジタル化したり、複雑な承認フローをそのままシステムへ移したりすれば、非効率な仕組みが残ります。
まず業務を整理し、そのうえで必要な機能を選びましょう。
4-3. すべての業務を一度に変えようとしている
属人化している業務が多い会社ほど、すべて一気に改善したくなります。
しかし、変更点が多すぎると現場の負担が増えます。
結果として「以前のやり方のほうが楽だった」となり、元に戻ってしまう可能性があります。
経営への影響が大きい業務から、段階的に改善してください。
4-4. 現場の意見を聞かず、経営者や管理職だけでルールを決めている
経営者から見れば非効率に見える業務でも、現場にはそのやり方を続けている理由がある場合があります。
その背景を確認せず新しいルールだけを決めると、現場に定着しません。
改善策を導入するときは、「なぜ変えるのか」「現場にどのようなメリットがあるのか」まで説明することが重要です。
そのうえで、誰が・何を・いつまでに行うのかを明確にしましょう。
4-5. 「属人化をゼロにすること」が目的になっている
属人化をなくすこと自体が目的になると、専門性まで失われる可能性があります。
たとえばトップ営業担当者の提案方法を標準化することは重要ですが、その人にしかない経験や強みまで消す必要はありません。
必要なのは、その人がいなくても顧客情報や進捗が分かり、最低限の対応ができる状態です。
| 誰が悪いかではなく、なぜ機能していないかを見る。この視点を持つことで、属人化解消が単なる担当者変更やルール追加で終わりにくくなります。 |
自社の属人化が「業務の問題」なのか「人・役割・組織の問題」なのか判断が難しい場合は、組織・経営コンサルティングの支援内容も参考にしてください。

5. 属人化を放置するリスクと解消するメリット

属人化は「今のところ業務が回っているから」と放置されやすい問題です。
しかし、担当者が働けていることを前提とした運営にはリスクがあります。
一方、属人化を適切に解消すると、業務継続だけでなく人材育成や経営者の負担軽減にもつながります。
人手不足が続く現在、特定の担当者だけが業務を把握している状態は、事業継続上のリスクにもなります。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」では、正社員の人手不足を感じている企業は52.3%で、1月として4年連続で半数を超えています。
採用による補充だけに頼るのではなく、担当者が変わっても重要業務を継続できる仕組みを社内に残すことが重要です。
参考:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」
5-1. 担当者の休職・異動・退職で業務が止まる
最も分かりやすいリスクは、担当者が突然不在になったときに業務が止まることです。
特に請求、顧客対応、システム管理などの重要業務が一人に集中している場合、会社全体へ影響する可能性があります。
不在になってから引き継ぐことはできません。平常時から情報とノウハウを残しておく必要があります。
5-2. 業務効率や品質が担当者によって変わる
手順や判断基準が統一されていないと、担当者によって作業時間や品質が変わります。
顧客対応であれば、「担当者によって回答が違う」という問題にもつながります。
一定の基準を共有すれば、個人の強みを残しながら最低限の品質をそろえやすくなります。
5-3. 一部社員の負担が増えて離職につながる
仕事ができる社員ほど業務を任され、負担が集中するケースがあります。
「あの人しかできない」という状態は会社にとって便利に見えますが、本人には大きな負担です。
休めない、常に質問される、他の仕事へ挑戦できない、といった状況が続けば離職につながる可能性もあります。
属人化解消は、会社を守るだけでなく担当者を守るためにも必要です。
5-4. ノウハウが会社に残らず、人材育成が進まない
個人の頭の中だけにノウハウがある状態では、次の社員を育てにくくなります。
業務の目的・手順・判断基準を言語化すれば、教育材料としても活用できます。
属人化解消と人材育成は別々の取り組みではありません。
会社のノウハウを組織へ残すことが、次の人材を育てる土台になります。
5-5. 属人化解消により事業継続性と業務品質が高まる
重要業務を複数人が担当できれば、急な欠勤や異動が起きても対応しやすくなります。
さらに手順・判断基準が共有されるため、業務品質のばらつきも抑えやすくなります。
「担当者がいなくても止まらない」という状態は、組織の安定性を高めます。
5-6. 担当者・管理職・経営者の負担を減らせる
属人化は現場社員だけでなく、経営者にも起こります。
社員が細かな判断まで毎回社長へ確認している会社では、経営者が現場対応から離れられません。
判断基準と権限を整理し、現場で判断できる範囲を増やせば、経営者は経営判断に使える時間を確保しやすくなります。
5-7. AI・DXや業務改善を進めやすくなる
AI・DXを進めるためには、「現在どのような業務を、誰が、どの手順で行っているのか」が分かっている必要があります。
属人化した業務は、その前提が整理されていません。
反対に、業務フローや判断基準が整理されていれば、「ここはAIで文章作成を効率化できる」「ここは自動化できる」「ここは人が判断すべき」と切り分けやすくなります。
属人化解消は、DXを進めるための土台にもなります。
6. 属人化解消に役立つAI・ITツール

AIやITツールは属人化解消に役立ちますが、目的に合わせて選ぶ必要があります。
重要なのは、「有名なツールを導入すること」ではなく、「どの属人化を解消したいのか」を先に決めることです。
6-1. ナレッジ共有・マニュアル管理ツール
業務手順やFAQ、ノウハウなどを社内で共有するためのツールです。
個人PCや紙資料へ情報が分散している企業では、情報を一カ所へ集めるだけでも検索性が高まります。
ただし、保存場所を作るだけでは使われません。更新担当者や更新時期、情報の分類ルールまで決めておきましょう。
6-2. プロジェクト・タスク管理ツール
誰が・何を・いつまでに行うのかを見える化するツールです。
進捗が担当者の頭の中だけにある状態を防ぎやすくなります。
特に複数人で進める業務では、担当者・期限・進捗・次のアクションを共有できる仕組みが有効です。
6-3. CRM・SFA・ERP・ワークフローシステム
営業や顧客情報が属人化している場合はCRM・SFA、経営資源や基幹業務を統合管理したい場合はERP、申請・承認業務を標準化したい場合はワークフローシステムなどが選択肢になります。
ただし、導入すれば自動的に属人化がなくなるわけではありません。
誰が入力するか、どの情報を残すか、更新しなかった場合どうするか、といった運用ルールが必要です。
6-4. 生成AI・業務自動化ツール
生成AIも、属人化解消の補助として利用できます。たとえば、次のような業務です。
- マニュアルのたたき台作成
- 会議議事録の整理
- メール文章の作成
- データの整理
- 分析
- 定型文の作成
- 社内情報の検索支援
Brand Hatchでも、ChatGPTなどの生成AIを記事制作、SNS投稿、営業資料、議事録、マニュアル、メール、分析、案件管理など幅広い実務で活用してきました。
ただし、AI活用でも「導入したか」ではなく「現場で継続して使われているか」を重視します。
既存業務を整理せずAIだけ追加すると、社員が何に使えばよいか分からず定着しないことがあります。
| 業務整理 → 標準化 → AI・DX の順番を基本にすると、実務へ落とし込みやすくなります。 |
7. 実務事例|数年間機能しなかった部署を約1カ月で改善

ここでは、Brand Hatchが関わった組織改善の経験を紹介します。
この事例は「属人化だけ」を対象にしたものではありませんが、人・役割・業務・報告方法を見直したことで、業務の見える化や経営者負担の軽減につながった例です。
7-1. 改善前|数年間うまく機能していない部署があった
対象となったのは、数年間にわたってうまく機能していない部署でした。
組織を改善するとなると、新しい制度やルールを導入したくなるかもしれません。
しかし、最初から解決策を決めることはしませんでした。なぜ機能していないのかを把握するため、まず人と現場を確認しました。
7-2. メンバー全員への個別ヒアリングと現場確認を実施
最初に行ったのが、部署メンバー全員への個別ヒアリングです。
あわせて、メンバーの反応や関係性、現場の状況、各人が担当している業務、得意・不得意、役割分担、業務上の問題などを確認しました。
重要なのは、社員の意見を聞いて「誰が悪いか」を決めることではありません。
経営者側の話と社員側の話、実際の現場・行動を組み合わせながら、「なぜ組織として機能していないのか」を整理しました。
7-3. 責任者・配置・業務・報告ルールを見直した
現状を整理したうえで、責任者の変更、メンバーの適性に合わせた配置変更、業務の見える化、報告ルールの整備を行いました。
ここで重要なのは、新しいマニュアルやシステムを入れることから始めなかった点です。
人と役割が合っていない状態で仕組みだけ追加しても、改善しない可能性があります。
先に人員配置や責任の所在を整理し、そのあとで業務や報告方法を整えました。
7-4. 約1カ月で組織のまとまりと業務の見える化につながった
改善後は、メンバーがいきいきと業務を行えるようになり、組織としてまとまりが生まれました。
また、業務状況が見えるようになり、経営者の負担軽減にもつながりました。
この経験から分かるのは、組織の問題を「その人の能力」の問題だけで考えてはいけないということです。
| 人が悪いのではなく、配置・責任・業務・報告の設計が合っていないために組織が機能していない場合があります。 |
属人化解消でも同様です。
マニュアルを作る前に、「なぜその人に仕事が集まっているのか」「なぜ他の社員では判断できないのか」まで確認することで、より根本的な改善につながります。
組織全体の役割や業務設計まで含めて見直したい場合は、Brand Hatchの組織・経営コンサルティングも参考にしてください。

8. 属人化を解消できたか判断するチェックリスト・KPI

属人化対策では、「マニュアルを作った」「ツールを導入した」といった実施内容だけで成果を判断しないことが重要です。
組織の状態が実際に変わったかを確認しましょう。
8-1. 属人化解消チェックリスト
次の項目を確認してみてください。
- 担当者が休んでも業務が止まらない
- 担当者が変わっても必要な情報を確認できる
- 業務の手順と判断基準が共有されている
- 役割と責任者が明確になっている
- 副担当者や代替担当者が実務を行える
- 報告・連携が自然に行われている
- 問題発生時に現場で一次対応できる
- 経営者や管理職による細かな確認が減っている
- AI・DXを導入した場合、日常業務で使われている
- マニュアルや業務フローが継続的に更新されている
チェックできない項目がある場合は、そこに属人化が残っている可能性があります。
一度にすべて改善する必要はありません。重要度の高い業務から、チェックできる項目を増やしていきましょう。
8-2. 属人化解消KPIの例
属人化解消を継続的に進める場合は、定性的なチェックだけでなく、自社独自のKPIを設定する方法もあります。たとえば次のような指標です。
| KPI例 | 確認すること |
|---|---|
| 代替対応率 | 担当者以外が対応できる業務の割合 |
| 手順書整備率 | 重要業務のうち手順が共有されている割合 |
| 引き継ぎ完了率 | 副担当者まで実務を行える業務の割合 |
| 業務停止件数 | 担当者不在によって止まった業務件数 |
| 判断集中度 | 社長・特定管理職への確認が必要な業務数 |
| 更新状況 | マニュアル・業務フローが最新状態か |
これらは一律の基準ではなく、自社の属人化解消状況を把握するための指標例です。
たとえば「代替対応率80%になれば成功」と他社と同じ目標を設定する必要はありません。
会社や業務によって、専門性やリスクは異なります。
最初に設定した「どの状態を目指すか」と照らし合わせながら評価してください。
| 属人化が解消できた状態とは、担当者が変わっても業務が止まらず、必要な情報・判断基準・役割が組織内で共有され、別の担当者でも一定品質で対応できる状態です。 |
9. まとめ|属人化解消は「人」と「仕組み」の両方から進める

属人化とは、業務の手順・判断基準・ノウハウなどが特定の担当者に集中し、その人がいないと業務を進めにくい状態です。
解消するためには、マニュアルやITツールだけに頼るのではなく、人・現場を確認する → 業務を見える化する → 優先順位を付ける → 配置・役割・責任者を見直す → 業務を標準化する → 引き継ぎ・教育を行う → AI・DXを必要に応じて活用する → 改善・定着を確認する、という流れで進めることが重要です。
また、属人化を完全になくす必要はありません。
専門性や個人の強みを残しながら、担当者が不在になっても会社として業務を継続できる仕組みを作ることが大切です。
最終的には、社長や特定社員が毎回指示しなくても現場で判断でき、問題が起きたときも組織として改善できる状態を目指しましょう。
属人化の原因を社内だけで整理するのが難しい場合はご相談ください
属人化している業務は分かっていても、「人の問題なのか」「業務フローの問題なのか」「役割・配置の問題なのか」を社内だけで判断するのが難しいケースがあります。
Brand Hatchの経営・組織コンサルティングでは、経営者の考えを現場が動ける仕組みに変え、自走する組織づくりを支援しています。
経営者・社員双方へのヒアリングや現場確認を行い、人・役割・責任者・業務フロー・報告ルールなどを整理したうえで、必要に応じてAI・DXも活用しながら実行・改善・定着まで伴走します。
最終的なゴールは、コンサルタントがいなくても自社で課題を見つけ、改善を続けられる状態です。
自社の属人化について「どこから直せばよいのか分からない」という場合は、まずは無料相談で現在の状況をご相談ください。

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